羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

半導体ICが足りない

 ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月19日起きた火事で、同社主力の車載半導体のラインが停止しました。これはもともと世界中の自動車用半導体が品不足だったところへ、さらなる打撃です。
 半導体生産には加工できる最小の線幅をルールと呼び、この幅は研究開発で年ごとに小さくなり、現在の最先端は7nm(ナノメートル)程度です。この開発競争でルールは4年で半分となり、同一面積でトランジスタ数が4倍、2年で2倍になります。この法則をムーアの法則と呼びます。

 私が現役のころ、つまり1970年ころからトランジスタのルールは3年で2分の1(つまりトランジスタ数では4倍)になっていました。しかし、このころから微細化には限界が有り、ムーアの法則は破綻する、と言われ続けてきました。上の図では、4年で4倍と傾きが小さくなりましたが、トランジスタ数が両対数グラフで直線になる、と言う法則は未だに生きています。ただし、最近のICの線幅は3nm~10nmとバラバラになり、3次元化して64層とか96層とかで区別しているとのことです。このおかげでトランジスタ数は法則に乗って増え続けています。
 さて、ルネサスエレクトロニクスの火事で停止したのは、30㎝直径のウェハーを使う、40~90nmのルールのプロセスラインで、生産設備28台が被害を受けました。生産の3分の1は他の工場や他社で代替え生産を行えるが、車載だけでなくすべてのICの需給がひっ迫しており代替えが難しいとのことです。中韓の最新製品が売れずに困っているのに、どうしてでしょう。(下の写真は日刊工業新聞のものです)

 さて、4年で2分の1、のルールに従えば現在を5nmとすると40nmは4世代16年前のルールです。数千億円を超える半導体の生産設備の技術的な寿命は非常に短く、せいぜい2世代で8年間です。それ以上は露光の波長も違うし、古い設備は使えないとされてきましたが、それは最新型の、高速低消費電力の超高集積のメモリーやPC用のプロセッサー、画像処理プロセッサーでの話です。
 古くなった製造設備は、“枯れた製造ライン”として、集積度を必要としないICを高い歩留まり率で作れるので、収益性が高くこれはこれで立派な産業でした。このラインが焼失したので、大きな影響が出ています。16年も昔のラインを作るのは、最新型のラインを作るのと同じに手間がかかり、新しい新型のラインを使って昔のルールでICを作ることはできないのです。しかし、幸いにも古い設備ですが、中古や新古部品を使って25台は早期に復活できるとのことです。それでも火事を起こした工場は煙や漏れたガスで汚染されており、むしろ工場環境の清浄化が大変と思います。ルネサスは再建に大変な思いをしていることでしょう。

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