羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

水素燃料の五輪トーチ、色がついた炎を作るのは大変なのです

 炎色反応と言うのを中学の理科で習ったと思います。物質によって酸化する時に出すエネルギーによって、出てくる光の波長が違う、と言う原理です。水素が酸化する時は、エネルギーが高いので可視光外になります。3月25日にスタートしたトーチの炎には色が着いているので、https://www.bbc.com/japanese/video-56519964
何か特別なことをしているに違いない、と調べてみました。
 案の定、トーチの燃料に水素を使うために色々と細工がしてありました。トーチの条件として、
1.IOCの要求で、トーチの炎の色は太陽を表すので、赤かオレンジ色
2.燃焼時間は7分半以上
3.トーチの重量は7分半の間手に持ち続けられること
4.燃焼でCO2を出さない
 以上の条件でトーチを作るのは、科学・工学の両方での工夫が必要になります。CO2を出しても良いならば、木を束ねた松明で用を果たせるが、長時間安定に燃やすのが難しい。安定した燃焼の為には1964年の時の様にガスボンベにブタンやプロパンなどのガスを小型ボンベに詰めて燃やせば良いがいずれもCO2を出してしまう。
 そこで今後の燃料として注目されている水素を使おう、と言うことになります。しかし、水素をトーチに使うには色々と課題があります。
1) 水素は爆発性が高い
2) 水素が漏れない容器を作るのは大変
3) 水素を容器から出すと、断熱膨張で周囲が冷たくなる
4) 水素の炎は無色透明
5) 耐雨、耐風、冬の北海道から夏の沖縄までの広い温度範囲で安定動作
この様な課題を解決するために今回は5つの会社が集まって約1万本のトーチを作ります。https://www.sankei.com/premium/news/200510/prm2005100008-n1.html

 企画・デザインが吉岡氏。LIXILが素材、UACJがトーチの外装加工を担当しました。燃料と水素吸蔵合金の容器(ボンベ)はENEOS、燃焼機構の製造と最終組み立ては新富士バーナーです。外装部分は廃アルミ材を再利用して、全体で2.4㎏の重さで抑えました。ENEOSの漏れの無いボンベは、水素利用の最先端技術でノウハウの塊でしょう。爆発性の高い水素を含む水素源のそばで火を燃やすのですから、大変です。
 色の無い水素の炎に色を着け、雨と風と温度に耐える水素燃焼機構を作った、新富士バーナーがどの様な工夫をしたかを紹介いたします。詳しいことは、https://www.bepal.net/gear/burner/81453 に有ります。下の写真は燃焼部をカットしたもので、左側が燃焼部分、右端にボンベが付き、水素が供給されます。

 燃焼は、ボンベから出た水素に空気を混ぜてから大きな青い炎を作る予混合燃焼。この青い炎がプラチナ触媒を加熱して、雨風でも消えない触媒燃焼を作ります。触媒燃焼は800℃でも動作するので、この低い温度で水素を拡散燃焼させて、赤い炎を作り出します。つまり、通常の酸水素炎は温度が高すぎて無色になる所を、温度を下げて赤を発色させるわけです。
 この様に片手で持てるトーチの中には最新の技術とノウハウが詰まっています。トーチを直接見る機会が有ったら、ぜひご注目ください。ただし、1964年の東京オリンピックのトーチは煙を出しましたが、2020年型は煙を出しません。もし出せ、と言われたらきっと実現するでしょう。赤い炎よりもちょっとだけ簡単ですが、重さが増えるので採用されないと思います。皆さんもどうしたら、CO2無しで煙を作れるかお考え下さい。

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