羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

火星でNASAヘリコプターが初飛行 (低レイノルズ数の克服)

 4月20日のBBC電子版https://www.bbc.com/japanese/56811215が、NASAの小型ヘリコプター(インジェニュイティー、創意工夫の意)が40秒間の飛行に成功した動画を載せています。電磁波を仕事としていますが、飛行機は趣味として、両方共に大好きなテーマです。
 火星の空気密度は地球の100分の1です。この条件での飛行は、空気力学的には小昆虫やタンポポの綿毛と同じくらいとのことで、この様な空気力学も研究テーマとされている方に、金沢工業大学の岡本正人先生がいらっしゃいます。ご紹介をすると、
研究室HP : http://www2.kanazawa-it.ac.jp/okm-hp14/index.html
昆虫の飛行 : https://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g003680
 岡本教授には、5年前に後輩のT.R君と共に、彼が中学2年の春休みに、紙飛行機についてお教え頂くために研究室を訪問したことが有ります。T.R君は、私の小学校から大学までの後輩で、小学校6年から中学3年までの夏休みの課外活動で、紙飛行機作りの相談に乗っていました。中2と3での目標は滑空比10の達成でした。滑空比10とは、10m飛んで高度が1m落ちる、と言う飛行を意味します。岡本先生はこの様な性能の紙飛行機を作られ、NHKテレビでこれを達成されましたが、挑戦者たちは失敗をしたと思います。
 研究室を訪問した時には、先生には細かなこともお教え頂きました。大事なことはレイノルズ数で設計をすること。滑空比10は1気圧の環境下ではほぼ限界に近い値であることもわかりました。それでも2年生までの経験も役立ち、3年生の時に無事にこれを達成し、学校からも賞を頂くことができました。下の写真はその時の証拠写真で、体育館の舞台の上からT.R君(当時中2)が、カタパルトの射出点の高さ2.0mから射出して、20mの地点までの飛行中の写真です。

 レイノルズ数とは、流体中を運動(飛行)する際の翼面の揚力/抗力を表し、滑空比と比例します。つまり、この値が大きければ遠くまで飛ぶ紙飛行機が作れます。レイノルズ数は、翼面の空気密度pと速度vと流れる距離L(翼の幅で翼弦)に比例し、空気の粘性に反比例します。火星での飛行は、圧力pが地球での100分の1なのでレイノルズ数が非常に小さくなります。このため、揚抗比が悪くて飛行機やヘリコプターを飛ばすのが難しくなります。

 左のグラフは生物や飛行機が、それぞれの速度で飛んでいる時のレイノルズ数をグラフ化したもので、東京大学先端科学技術研究センターの川内啓二先生の論文にある図を参考にしました。記録用紙飛行機のレイノルズ数は岡本先生のデータから引用しました。
 右の図は、火星で飛んだインジェニュイティーで、ローター(回転翼)の半径は60cmで平均翼弦は5cm程度。地球上でのヘリコプターのローター回転数が毎分100~200回転では、圧力が100分の1でのインジェニュイティーのレイノルズ数は、アザミウマレベルになってしまいます。固定翼にすると空力的な条件は良くなるが、離着陸ができません。
 そこでインジェニュイティーにNASAが行った創意工夫は、回転翼の回転数を毎分2500回転としたこと。これは地球上のヘリコプターの10倍以上で、トンボの様に翅を動かす速度を速くして空気速度vを速め、翼弦もトンボの10倍以上にしてレイノルズ数を稼いでいます。これにより、インジェニュイティーは地球でのトンボや紙飛行機よりも少し良いレイノルズ数と揚抗比で、回転翼を回して飛んだのではないかと思います。
 今回の飛行時間は40秒とのことで、火星史の中でライト兄弟の偉業に匹敵し、かつ飛行時間は3倍以上でした。次のフライトがどの様なものなのか、楽しみに待ちましょう。

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