羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

太陽光発電 その3 シリコン太陽電池

 シリコン太陽電池は、太陽光の可視光から近赤外領域の光を吸収します。吸収した光は電力に替えられ、外に光を出さないので真っ黒く見えます。ただし、近赤外線の1.12eVエレクトロンボルト以下、波長では1100nmよりも長い波長は吸収・変換ができず、外に出てきます。これは、光が電磁波であり、電磁波は波長が長いほど周波数とエネルギーが低いからです。ここでeVエレクトロンボルトとは、エネルギーの単位です。
 現在、大部分の太陽電池材料はシリコン元素です。これはまず、集積回路ICで使い慣れた材料で、加工方法を良く知っていたこと。シリコンは地球上で酸素に次いでありふれた材料で入手し易いこと。そして、太陽光の大半を電流に変換できるからです。

 上の図は、太陽電池が光を電流に変換する原理図で、シリコン結晶の電子の状態を表します。太陽電池に入射した光hνが、シリコン原子から電子を結晶空間中に解き放つエネルギーEg以上であれば、結晶中に電子と電子の存在した正孔を一つずつ作ります。Egはバンドギャップと呼び、シリコン原子に電流を発生させるために、光が必要とするエネルギー値です。この電子正孔対の発生の場所が、N型とP型の境界の空乏層領域であれば、光で発生した電子と正孔は反対方向に動き、電極から取り出すことができます。
 太陽電池に太陽光が入射した時の出力特性は下の図の様になります。縦軸は電流で、Iscは太陽電池の両端子を短絡した場合に流れる電流です。横軸は電圧で、Vocは両端子を開放した場合の電圧です。この太陽電池から最大電力Pmaxを取り出す時の電流値と電圧値をそれぞれ、Ipmax、Vpmaxと呼びます。

 ここで、VocはEgにはなりません。まず、端子電圧とは、電池の動作原理図で、フェルミ順位と呼ばれる点線の両端が、実際に端子に現れる電圧です。原理図の点線が水平になった時が短絡された場合で、Jscが端子に流れます。Vocは上下の実線が水平になった時で、図では点線は逆の傾きになり端子には電圧が生じ、電池内部では電子も正孔も動ず電流は流れません。
 点線と実線の間には間隔が有るので、VocはEgよりも若干小さくなります。この間隔は、P型とN型の半導体を作り込むための不純物によって作られたものです。
 上下の実線の間隔のEgが1.12eVなので、赤外光よりもエネルギーの大きな可視光や紫外光が2~4eVのエネルギーを持っていても、電子正孔対を作ったときは、1.12eV以上のエネルギーが無駄になります。つまり、太陽電池は太陽からの光エネルギーを使い切っていないわけで、使いきれなかった分のエネルギーは電池の温度を上げて出力特性を悪くし、かつ電池が劣化します。
 シリコン太陽電池は、紫外から赤外までの太陽光の4分の3くらいの光を利用できるはずですが、良くても4分の1程度しか太陽光のエネルギー電力に変換できません。これはEg以上が捨てられたことと、せっかく作った電子正孔対が、電池内で再結合して消えてしまうからです。再結合は、シリコン結晶内と表面の欠陥に電子、正孔がトラップされた時に、起こります。
 従って、変換効率の高い太陽電池を作るには、結晶欠陥を作らない製造方法を低価格で実現しなければなりません。その上に太陽電池には低価格化が望まれるなどの課題が残っており、将来への改善の余地が有ります。
 これらの課題とは、まず結晶材料の低価格化、電池を薄く切り基材に貼りつける方法、結晶内に取り入れた光を閉じ込める構造、電池内での再結合を減らす製造方法、電池表面で発生した電流を集める配線が作る影を減らす工夫、1.12eV以下のエネルギーの赤外線を使う方法、などの沢山の課題が有ります。

Copyright © 2015-2021 Hane, Inc. & Beacon Associates, Inc.