蕎麦はやっぱり江戸の味
私の贔屓の蕎麦屋は麻布十番の商店街の一番奥(つまり六本木側)の「更科堀井」です。この店にはバス1本で行ける便利さと、蕎麦が美味しいので時々行きます。根岸に住んでいた若いころは、上野広小路の連玉庵の天ぷらのかけそばを好みましたが、最近は代が変わったようで、残念ながら私の好みではありません。
根岸近辺では、鶯谷駅の南口改札前の改造前の小さな広場に、「公望荘」という古い蕎麦屋が有りました。お年寄りばかりで経営している店で、いつ無くなるか心配をしていたのですが、そばの味はかつての連玉庵に匹敵する味でした。しかし、結婚してからずいぶん経って鶯谷駅を通ったら、公望荘は無くなっていました。これも仕方がないですね。
それでもこれからご紹介する麻布十番の「更科堀井」は、流石の老舗でこれらの2軒が無くなっても大丈夫な味です。この店には10年以上通っていると思いますが、店長さんも給仕のお姐さんも替わらず、サービスと味がずっと変わらないのが素晴らしいです。
50歳を過ぎて、食べ物にうん蓄を言う様になるまで、私は暖かいかけそばが好きでした。連玉庵も公房荘もちょっと張り込んで美味しいものを、と思った時に行く店でした。しかし、60を過ぎて行く更科堀井は何となく緊張して行く店で、格好をつけながら蕎麦を食べることになっていました。従ってお酒となにかつつくものを頼んでから、下の写真の小海老の天ぷらと盛り蕎麦のセットを頼み、天ぷらと蕎麦を肴にしながらお酒を飲んでいました。定番のかき揚げにすると、酒のつまみにし難いからです。

しかし、ごく最近、近所の広尾1丁目の交差点のかどの天ぷらのかけ蕎麦を食べたところが、結構おいしくて、何回か行くことになりました。現在は病で倒れて行くことが出来ませんが、治ったら行きたいと思います。この店の天ぷら蕎麦が、かけ蕎麦の復活の原因となりました。おそらく病気で体が冷えるので暖かい汁蕎麦が食べたくなったからでしょう。この店の天ぷら蕎麦は、よくある大きめの海老の天ぷらを1本付けしたものです。
私は、蕎麦が来れば最初に天ぷらを蕎麦つゆに浸してしまい、天ぷら油と衣の味をつゆに移しています。大事なことは、ころもがつゆに溶けて蕎麦ところもを一緒に食べるのが好きだからです。江戸っ子としては、ぐちゃぐちゃと汚くて下品な食べ方でしょうが、私はごま油の香りのつゆが好きなのです。
天ぷら屋の老舗をしていた友人に訊くと、溶けないのは天ぷら上げる温度が高いからだそうです。溶けにくい広尾1丁目の天ぷらそば、ころもの色が更科堀井に比べて茶色くて、高温で揚げたことが分かります。これからはこの店の天ぷらは、ころもがつゆに馴染むまでゆっくり待ってから味わうことにします。それにしても、更科堀井、恐るべしです。
