中国太平洋艦隊への対処
小泉防衛相が、原子力潜水艦を保持する可能性を議論することはやぶさかではない、との発言をしました。少し前ならば、政治的な大炎上を引き起こす可能性が有りましたが、野党は政策論争を行う能力に欠けており、議論は起きません。共に進取の能力が低下した高齢者ぞろいの支持者と、社会的知識と論理的思考能力の欠けた議員では、この原潜保持についての論争を起こせないからです。日本の原潜保持に賛成の私としては、国会の議論の中で原潜保持が具体的かつ十分に議論されて原潜保持の意見が認められることを望んでいますが、議論が起きなくては先へ進めません。政策議論の能力の無い、左派系の政党と支持者を抱える問題点です。
さて、日本の原子力潜水艦はどんな場で使われるのでしょう。原潜が行動可能なのは深海の日本海と日本列島の南西側、つまり紀伊半島と関東の沖合です。今後、中国は遠洋航海能力を身に付けて、空母打撃群と戦略原潜を配置する準備をしており、目的は太平洋側の貿易路とグアムハワイ方面からの空路の妨害でしょう。
これまで日本の海上自衛隊は、沖縄列島線の内側、つまり西側に静かな通常動力潜水艦を数隻配置しておけば、中国艦隊は自由な行動が出来ませんでした。しかし、沖縄の列島線を抜け出られると太平洋側という広い海域を守る必要が生まれます。大型の艦船と輸送艦と原潜で構成された中国艦隊が20ノット以上で長時間走れば、ディーゼルエンジンとリチウムイオン電池で最大速度20ノットの日本の潜水艦は追従できず、中国艦隊は野放しになります。
こんな状況に備えて、多数の小型で低価格の哨戒艦を建造して、有事の際に長射程の対艦ミサイル群を用意してきましたが、防衛と抑止力に効果が有るのが原子力潜水艦です。原潜の高速で長距離の持続的巡航性能は原子力動力でなければ得られません。原潜は動力に核物質を使いますが、核兵器では有りません。
さて、日本に向いた原子力潜水艦とはどんな仕様でしょう。参考として、日本で最大の通常動力潜水艦のたいげい型は、全長84m、排水量3,000t、6,000馬力のモーターを使用して、水中最大速力は約20ノットです。次の参考は、米国のロサンゼルス級で、全長110m、排水量6,300t、30,000馬力の原子炉でスクリューを駆動して、水中最大速力は33ノットで、機動部隊と長時間の共同歩調が取れる巡行能力を持ちます。
もし、日本列島の東岸を哨戒し攻撃を防ぐための潜水艦であれば、第一の必要な能力は持続的な高速性能と静穏性、次に長時間の哨戒用の乗組員の居住性の向上です。現在のディーゼルエンジン+リチウムイオン電池のたいげい型通常動力潜水艦が待ち受けているところに、中国艦隊が来れば攻撃が可能ですが、広い太平洋のどこで待ち受ければ良いのか分かりません。従って、20ノットを超える艦隊を追いかけて攻撃が可能なのは原発を動力とする潜水艦で、原潜の保持が大きな抑止力です。
太平洋で待ち受ける原潜としては、たいげい型とロサンゼルス級との中間の大きさで、原子炉の出力は2,000馬力(約1.5MM)程度でしょう。必要な大きさは、原子炉を除いたペイロードは、乗員数は同じで居住性向上で1.2倍程度の大きさで済むでしょう。詳しくは分りませんが、容積は1.5倍程度の排水量4,000~5,000トンで済むのではないでしょうか。つまり、ロサンゼルス級の6,300トンの7割程度です。この潜水艦を少なくとも3隻を保持する必要が有り、原子炉を除いて価格的にはたいげい型5隻分程度でしょうか。十分に防衛費の中で実現可能です。
課題は原子炉の製造です。ロサンゼルス級は40,000馬力で1.4倍の排水量で33ノット、日本原潜は、4,500トンで20,000馬力と仮定すると、原子炉の出力は約15メガワットになります。トラックやコンテナで移動可能なマイクロ炉の定義は20メガワットですから、大きさ的には一般原子炉の様に周辺機器は大きくならず潜水艦に積めるかもしれません。ただし日本の製造経験が有るマイクロ炉は0.5メガワットで、30倍の大きさの原子炉は、市場性が無いためか製造の経験が有りません。
技術大国の日本だから頑張ればなんとかなる、と言う楽観論は辞めましょう。20メガワットの可搬型原子炉を造り、安全性を確認するには少なくとも5~10年はかかり恐らく間に合わないでしょう。そこで中国が日本の東岸に出てくるのを4年後と仮定すると、この4年で別手段を講じる時間的余裕がうまれる、と考えましょう。
使うのは、空母攻撃用の空中ドローンと中国原潜攻撃用の水中ドローンを、中国艦隊の進路上に多数ばら撒いて動く地雷原を造ることです。対空能力を増強したFFM(もがみ型)と新型FFMと、さくら型哨戒艦をドローンの統制艦として、C2輸送機から大量投下したドローンを待ち伏せ攻撃に使う。この方法は対称戦的な原潜使用に対して非対称型で、既存技術を使った費用効果の大きな方法となります。これらのドローンを平時は待機させ、中国が海路封鎖を始めれば、ドローンを一挙に展開可能の攻撃力を示しておけば、十分な抑止力になります。
待ち伏せ用の防空用FFMと哨戒艦は4年あれば十分な数を揃えられます。輸送機数が不十分かもしれませんが、ドローンは基礎経験が有ります。ドローンと輸送機の費用は原潜1隻以下でしょう。このブログ、原潜の話題から入りましたが、結局はドローンに落ち着きました。4年あれば何とか間に合います。防衛庁は、すでにドローン抑止力の拡充を始めており、用法にひと工夫すればドローン地雷原は可能です。
勿論、原潜用の可搬型原子炉ほ開発は続けた方が良いです。FFMや哨戒艦の負担を減らせます。
