電磁波対策方法についての具体的な解説(その1)
【電磁波による障害の医学的エビデンス】
2016年1月12日のブログに、「電磁波対策の理論」として、【シールド方式】の原理を、空間インピーダンスの不整合を利用する物、と理論づけを致しました。このシールド方式は、電磁波の影響を受けたくなければ、導体で覆って電磁波を防ぐ簡単な方法です。
このシールド方式を使った電磁波対策品として、電磁波対策エプロンが有ります。古くは、PCのブラウン管ディスプレーの出す低周波電磁波(実際には磁界)が身体に悪い、と女性を対象としたエプロンが市販されていました。なぜか女性用だけで、男性用は無かったように思います。ブラウン管ディスプレーが全て液晶ディスプレーに置き換わった現在でも、妊婦や若い女性を対象とした電磁波対策エプロンが販売されています。これって効果があるのでしょうか?いやいや、その前にエプロンのような電磁波対策品は本当に必要なのでしょうか。この点から考えてみましょう。
拙著「生体と電磁波」は、電磁波による影響を調査、研究した、医学論文235件を取り上げています。これによれば、電磁波は周波数と強さ、の2つに加えて信号波形の複雑さに関わる変調の有無も、影響に対する重要な要素です。この3つについて多数の論文を整理し、まとめると、まず携帯電話用の変調のかかった800MHz~2.1GHzの電磁波による、主にうつや不安、頭痛その他の神経症、脳血液関門の開大による不純物の脳内への侵入、脳腫瘍、胎児の奇形、などの症例報告。および幼児や小児の発達障害と精神障害などの疫学調査、などの報告が有ります。
800MHz以下数MkHzまでの報告は少なく、ブラウン管ディスプレーの100kHz~数MHzの磁界によるものまで、間が空きます。
電磁波障害で最も多くの論文が有るのが、50,60Hzの商用電源からの磁界によるものです。この極低周波磁界によるがん以外にも、広く全身に電磁波の影響が及んでいることが発表されています。
電磁波が我が国(注1)で最初に問題になったのは1990年代のことで、PC用のブラウン管ディスプレーCRTからの電磁波でした。当時のCRTは毎秒30フレーム、CRTは偏向コイルの交流磁場で電子ビームを縦と横に振っていました。走査線を縦に525本と折り返し、走査線の横方向の周波数は約15kHzで、ここに電子銃の電圧のアナログ値の画像信号が加わっています。この100kHz~数MHzの交流磁場が外部に漏れていたわけです。ハツカネズミを使った動物実験では写真の様に明らかに影響が有り、特に老化現象が顕著でした。
(写真等の転載を禁じます)
この写真は1998年に冨岡らがマウスを使って、毎日24時間を半年間、100kHz、300V/m、0.3μTのCRTによる被曝の条件で実験をした結果です。マウスの目は全部が黒目ですが、水晶体がダメージを受け、白内障になって白くなっています。電磁波の影響は目だけでなく、毛がボロボロになって老化も進んでいます。実験条件等は拙著に有ります。幸いにもこの原因となったブラウン管ディスプレーは、今は使われていません。強い磁界や電界を使わない液晶ディスプレーになりました。
ちなみに、0.3μTと言う磁界強度はICNIRPの規制値以下で、ブラウン管を製造した企業に法的な落ち度はありません。それでもこの様な障害を受けたのは、連続被曝条件だったから、と考えています。
【電磁波対策品は必要か】
現在、多くの電磁波対策用と称する、シールド方式の商品が売り出されています。効果がある物も有れば、電磁波が目に見えないことを良いことにして、え~っ? と言いたくなる物も有ります。マウスがボロボロになったように、昔のブラウン管ディスプレーの出す磁界は動物実験では障害源でした。この対策として、プロが作った対策用のエプロンが有り、これは効果が有ります。
何故効果が有るのか、一方、多くのエプロンはお進めできない、など詳しく説明したいので、続きは次回にします。
(注1)電磁波による身体への障害が問題になったのは、第2次大戦後です。米ソの軍拡競争の中で、レーダー技術の研究開発で、多くの実験が行われました。レーダーは最先端技術で、現在TVや携帯電話が使っているVHS帯やUHF帯の広い周波数範囲で、多くの関係者が電磁波被曝をしたようです。この経験から、米軍の電磁波被曝に対する規制は厳しく、一時はUHF帯の規制は民間のICNIRPよりも厳しい値でした。現在は、ICNIRPが米軍の規制値に合わせています。