地球温暖化(その3) 発電技術の現状
その2でお約束した、炭酸ガスの排出量を減らす方法の説明です。炭酸ガス排出の3役は、火力発電所(41%)、産業活動(25%)、そして自動車 (17%)です。今後、自動車はEVが増えるので、見かけの炭酸ガスが減っても火力発電の負担が増えるでしょう。産業用はコストを下げるため原料の使用量を減らす技術は飽和しているので、これの炭酸ガス削減は期待薄です。
従って、最も炭酸ガスの排出削減をして欲しいのは火力発電所です。我が国の発電は、東日本地震の前は火力が主体で、原子力と、自然(水力)が一部ずつを負担していました。しかし、東日本大震災で全ての原発が稼働停止したため、火力発電への負担が一気に増え、事故直後の年間化石燃料費は最大で7.7兆円に達しました。この時の、原発ストップによる増加分は3.6兆円で、輸入した燃料のコストは倍になりました。それでも現在は、火力発電の燃料費は55%減って4.2兆円になっています。これは省電力の徹底と発電所の効率改善とほんの少し原発が動き、自然エネルギーも増えているからです。なお、現在の火力発電の負担は総発電量の88%で、原発は4%です。
火力発電は液化天然ガスLNGと石炭を燃料としており、前者の排出ガスは水蒸気と炭酸ガスが半分ずつ程度です。石炭発電は、かつては窒素や硫黄の酸化物による光化学スモッグや、PM(微粒子)の原因でしたが、現在はこれ等の汚染物質は90%以上削減され、出しているのは炭酸ガスだけ、となっています。またLNGも石炭も共に燃焼方式の改善で、エネルギー効率が大幅に向上しています。これが燃料費を7.7兆円から、4.2兆円へ減ることの理由の一つにもなっています。
現在の世界の石炭火力発電の発電量あたりの炭酸ガス排出量は、0.96kg/kWh、日本の石炭火力は0.86kg/kWhと、世界平均よりも10ポイント低い値ですが、2025年の目標は、石炭ガス化燃料電池複合発電で0.59kg/kWhを目指しています。LNG発電は現在0.35kg/kWhで、2025年には0.28kg/kWhを目指します。実用化されれば、両方共に炭酸ガスの排出量を、世界平均の2分の1から3分の1の値を達成することでしょう。
LNG発電は炭酸ガス排出量が半分と少なくて良いのですが、石炭の方は輸送や貯蔵が容易で価格も安いので、広く世界中で生産されます。
資料として、平成27年11月の資源エネルギー庁の「火力発電の高効率化」と。
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/018/pdf/018_011.pdf および、電気事業連合会の
https://www.fepc.or.jp/theme/energymix/content2.html を使いました。
我が国の新型石炭火力発電技術を使うことで、たとえ炭酸ガス排出量がLNG発電の倍の炭酸ガスを出しても、発展途上国はコスト面でこちらに手を出すでしょう。新型石炭発電にすることで炭酸ガスの排出が半分近くになり、PMやスモッグなどを減らすことになり、保健衛生面でも効果的となります。