昆虫類の弱点を突く新殺虫剤でマラリア蚊を撲滅
世界で最も人間を殺したのは、人間では無く「蚊」です(読売新聞6月27日朝刊)。具体的にはハマダラ蚊が運ぶマラリア原虫が血中で繁殖する際に、赤血球が破壊された時の溶血反応で発熱し、増殖して毛細血管が詰まって死亡に至ります。2021年の単年のマラリア感染者は2億5千万人で、死亡は62万人です(WHO発表)。これに比べて、新型コロナ(武漢)ウィルスの2年半の累計感染者数は6億9千万人、6百89万人が亡くなっていますが、発症者当たりの致死率はマラリアが10倍です。
これは、マラリアの感染地域が発展途上国で、新型コロナの罹患者数が多い米、印、EUの国々では医療施設が整い、ワクチンが重症化を防いでいるからです。一方、マラリア原虫は蚊が刺してから1、2週間潜伏し、発症後数日以内に治療をしないと死亡するため、医療施設が整っていない途上国では早期発見が出来ず、高い致死率となります。
ここからが本題ですが、マラリアはウイルスや細菌の感染で起こるのではなくて、蚊に刺されて起こるので、ワクチンなどの医学的な予防措置は使えません。予防薬が幾つかありますが、副作用が有り、薬剤耐性を持つマラリア原虫も地域によっては存在します。従って、効果的な予防措置とは蚊を駆除することと、蚊に刺されないようにすることだけです。しかし、最近は殺虫剤に耐性を持つ蚊が現れて事態が深刻になっています。
人類にとって蚊は古来からの天敵で、油断をすると先進国に住む者にも危険な生物です。ヒアリやスズメバチなどの命に関わる昆虫もいますが、身の回りに沢山いるゴキブリやハエは実害がほとんど無く、鬱陶しいだけですが、できれば身の回りにはいて欲しくないです。そんなわけで、耐性を持たれること無く、身の周りから蚊やハエ、ゴキブリを駆除する方法を書きます。
読売新聞の記事には、蚊の駆除に洗剤を薦めています。洗剤を水で薄めてスプレーで吹きかけ、雨中での飛行を妨げると有りましたが、これだけでは理解不十分です。昆虫類の呼吸は、気門とよぶ穴から腹部にある気管に空気を取り入れ、ここで酸素と炭酸ガスを交換します。気管の末端に気嚢と呼ぶ袋を持っている種類も有ります。
気門は、雨や霧などが気門に付着すると、毛管現象で水を吸い込んで塞がれてしまい、窒息するという物理的な弱点が有ります。そこで、昆虫類は気門周辺に油分を分泌して水を弾き、気門が詰まるのを塞ぎます。
洗剤はこの弱点を攻めるもので、昆虫に水で薄めた洗剤をかけると油分による気門周囲の撥水効果が無くなり、気門に水が侵入して塞いで窒息死(溺死?)させます。洗剤は酸性でも中性でも食器用でも洗濯用でも、洗剤であればなんでも大丈夫です。
洗剤の濃度はシャボン玉液と同じくらいで、水10~20に対して洗剤1の液体を混ぜて、100均でスプレーボトルを買って入れておきます。ゴキブリにスプレーすると、10秒くらいは動きますが直ぐに動きが止まります。昆虫にとって洗剤は、気門の表面張力を破って窒息死させますが、洗剤は昆虫だけでなく、人間にとっても胞膜の脂質を破る有害な化学物質です。食器用の中性洗剤も、体に良くないことにお気を付けください。
この洗剤スプレーは非常に安価で、耐性を持たれませんが、欠点は蚊やハエに直接噴霧しなければならないことです。なお、市販の殺虫剤の大部分は、除虫菊の殺虫成分を化学合成して市販したピレスロイド系薬剤で、昆虫全てに対してオールマイティであり、空気中に漂わせておけば効果が有ります。もし、哺乳類や鳥類などの恒温動物に吸引されても、体温で速やかに分解されるので“ほぼ”無害です。しかし、ピレスロイドと言えども蚊やハエは耐性をもつかもしれませんが、洗剤スプレーは気門の撥水効果を無くすという物理的な殺虫効果なので、耐性を待たれません。そんなわけで、政府間援助で中性洗剤とスプレーボトルを、殺虫剤に耐性を持つ蚊がいるマラリア感染地域に送ったらいかがでしょう。