米国の移民問題と大統領選挙
前回の少子化問題は日本で一番大切なことでしたが、次は外国人移民の文化的な問題です。日本人はまだ、移民が日本社会に与える文化的な混乱には気付いていません。しかし、21世紀初頭から西側諸国では崩壊したソ連邦に代わって、移民が問題化し始め、最近は移民が政治的な争点となっています。今のところ、米国とEUでの移民のもたらす問題は、多くは失職や医療費高騰などの金銭的なことです。しかし日本では、金銭問題だけでなく、礼儀や道徳・倫理観の崩壊が大きな問題となるでしょう。諸外国の先例として、まず米国の移民問題について書きます。
米国は、2001年のジョージ・ブッシュ政権ころから毎年100万人以上の移民が流れ込み、オバマ政権の時にピークに達しました。定常的に流れ込む移民で、人口の移民比率は12%を超えて増え続けており、米国人労働者の職を奪い、治安が悪化しています。このため、2016年からのトランプ政権は国境の閉鎖を試み、政権末期には移民の入国数は一時的に70万人台まで減らしました。しかし2021年からバイデン政権は再度国境を開き、不法越境の移民を不法のままで入国したため、入国者数は一気にふえて、2022年、23年は200万人を超え、在任3年で合計1千万人が入国し、下図の様に多くは不法です。
大統領選挙の候補者のディベート(論戦)では、民主党と共和党は真逆の対応を主張しています。政権与党の民主党とバイデン現大統領の政策は、多様化と人種差別反対あるいは弱者救済などを根拠として、移民の不法入国の黙認と、脱炭素化理念による石油採掘の禁止と産業構造の改変です。しかしこの結果、石油採掘量を絞ったためエネルギー価格の高騰し、脱炭素化による産業効率の低下によるコスト高を招いており、住宅とガソリンと自動車の生産性の悪化とコロナ後の需要の急増による品不足などによるインフレで、体感する消費者物価はバイデン政権下で2倍近くになっています。
一方、トランプ候補と共和党は、この4年で増えすぎた移民による労働者の失職と低所得化、脱炭素経済政策の失敗とウクライナとイスラエルの戦費支援政策などがインフレを招いたとして、政策の失敗を攻撃しています。
米国の問題は、二人の候補者の政策が保守と革新(リベラル)の両極端に分化して、中間が無いことです。さらに、現在の両党の支持者が共和党は労働者で、民主党が金融や軍需産業、IT業界などの富裕層であるエスタブリッシュメントであり、両党の闘争が階級闘争となって簡単には決着がつかないことも問題です。また、この30年間で両党の支持層が逆転したことも話をややこしくしています。
しかし今回の大統領選挙では、政策の是非を論じる前にバイデン氏は認知症が露呈して、選挙はほぼ負けです。対立するトランプ氏は、バイデン氏が選挙戦から逃げない様に、認知症批判をオブラートに包んだままです。また、暗殺未遂で生き残った後の共和党大会では、選挙によって分断されている米国を修復し、暴力では民主主義が壊せないと大人の対応をすると共に、不法移民の侵入を防ぎ、国内産業の保護と活発化で、米国を一つにまとめる救世主のイメージを揚げています。
見逃せないのが7月10日に、下院で5名の民主党議員の賛成を含んで「Save America」法案が可決したことです。この法案は、米国の公民権を持たない人は選挙で投票する資格が無いとするため、民主党が画策する移民に参政権を与えて自党を有利にすることができなくなります。この法は上院での可決とバイデン大統領の署名が必要で、成立するか分かりませんが、この法律が下院を通ったのは重要です。
そして、トランプ候補の最大の武器が副大統領として選んだJ.D.バンス上院議員です。彼は若干39歳ながら、2003年高校卒業と共に海兵隊員を4年間勤務、2009年オハイオ州立大を2年で卒業し、イェール大ロースクールで2013年に法務博士号を取得し、同年にベンチャーキャピタルに入社して2020年に100億円を超える資金調達をしています。さらに、2016年に貧困白人家庭出身の自伝「ヒルビリー.エレジー」を出版しベストセラーとなり2020年に映画化されています。2022年にトランプ氏の推薦で上院議員選挙に立候補し、異例の若さで当選しています。私生活では2019年にカトリックに改宗し、夫人はインド系の2世で夫に勝る秀才と言われます。
政治的にはトランプ氏よりも硬い保守で、反中国、反イスラムであり、かといって親イスラエルでは無く、恐らく反移民。Wikipediaの最新更新日が昨日の7月20日であるように、世界中が未知だった彼に注目して情報を更新しています。
最後に日本への大統領選挙の影響ですが、「ほぼトラ」から「確実にトランプ」となります。しかし現状の日本は、バイデン政権と民主党に言いなりのATMの岸田政権と、それを指摘し反対する力が無い野党では、浄化能力が有りません。お金を出すほど世界に敵を作り、馬鹿にされている現状を打開するのは、9月の自民党の総裁選と、恐らく11月の総選挙で、保守の再編成をすることでしょう。