認知症を発症しやすい性格とは
msn.comのニュースによると、米国心理学会に投稿された研究論文が、高齢者の認知症の発症に影響を及ぼす性格の特徴があることを、ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャルサイコロジー誌で公開されたので、その内容を紹介します。
研究はシカゴにおいて、平均年齢80歳の1,954名の認知症と診断されていない被検者の性格の特性から、認知症を発症するリスクの関連性を解明するデータを収集しました。性格は、神経症傾向、外向性、開放性、協調性、誠実性の5つに特性を分類され、性別、学歴の他に、心臓病、脳卒中、うつ病、血管病などの既往歴を考慮しました。しかし、被検者の大半は女性で、多くが白人の中産階級から上流階級の人々とのことです。
それでは、結果です。
誠実性のスコアが高い人、つまり几帳面で自制力が高い人は、最も認知症を発症し難いという傾向でした。
一方、神経症傾向のスコアが高い人は、認知症を発症する可能性が最も高いことを示しました。神経症の傾向とは、自意識過剰な、不機嫌で、不安、不平、心配、恐怖、嫉妬、罪悪感、うつ、孤独、などの性格を持つ人です。まとめれば否定的、絶望的な性格です。
次に外向性ですが、これは複雑です。軽い認知症が出始めると、外向性の人は早い段階で助けを求める決心がしやすいので、認知機能が回復する、つまり治り易いです。しかしこのメリットは、認知症が進行すると外向的な性格は無くなり認知症の回復には役立たたなくなります。
最後の開放性と協調性の二つは、認知症との関連性はありませんでしたが、この二つは健康増進につながる傾向があり、これはこれで有用です。
この様に、認知症の初期段階では性格特性が影響をおよぼす様ですが、認知症を発症すると人格が侵食されてしまい、性格が無関係となり、死を回避することに関しても性格は何の意味も持たなくなってしまいます。
これらのことから、余談ですが長い健康寿命を得るには、落ち着いた暮らしと思慮深い行動が、より長い健康寿命につながるといえるでしょう。
ここからは私見です。認知症とは記憶や思考を担う脳細胞とシナプス結合系が劣化することです。シナプス結合は放っておくと結合が弱くなるので、考え、思い出すことで結合を再利用して結合力をリフレッシュ(活性化)する必要が有ります。
認知症になり難い誠実な人は、几帳面で自制力が高い事が特徴です。別の言葉で言えば自分の行動や言動に気を使い、相手に対する自分の行為の効果を予測します。これは自分だけでなく相手のことまで二人分を考えるので、最も思考能力を使い多量のシナプスをリフレッシュします。これに対して、認知症になり易い神経症の人は真逆の独善的な性格で、独善的に相手のことを考えずに自分の考えを押し付けるので、シナプスは再利用されず劣化します。
“おもてなし”の心や、相手を不快にさせない日本人の思考は、相手のことを配慮する二人分の頭を使うことであり、認知症の予防には効果が有ります。皆がこの様に振る舞えば、日本はさらに良い国になりますね。