老々介護の具体化は、共助で (新日本2100計画 13)
日本は約70年前まで、老人や子供の世話を家族や隣人や友人による共助と、本人の努力の自助で、明治維新や敗戦を乗り越え、国力を蓄え経済発展をしてきました。しかし1955年~1973年の高度成長期に日本社会は、貧しくても豊かな心で満足する価値観を失いました。今は、保育園や老人ホームなどの公助に任せるようになり、共助や自助は脇役となっています。
さらに、公助が福祉費という名の下で莫大な税金を使うようになり、医療と介護の合計は年間60兆円を超えます。この問題は端的に2つ、60兆円の使途が非生産的であることと、老人ホームの若い労働力の浪費です。2100年の人口減少に向けて、今後は高齢者が自ら助け合う共助を行うことで、税金の無駄遣いをやめ、若者には生産的な仕事をしてもらいましょう。さらに、莫大な公費の周りには利権という3つ目の弊害を生じています。共助による福祉費の削減は、この3つの問題を小さくすることになるかもしれません。
昔は、家族や隣の家が、子守やお年寄りのお世話と買い物の代行をする、などの自助と共助が有りました。しかし、保育園や老人ホーム事業は、共助で済むところを有料の事業にし、これに公費を注ぎ込めると厚生労働省と民間団体がビジネスチャンスとして飛びつき、公金を毎年数兆円以上注入しました。保育園も大事ですが、ここでは高齢者の介護に話をしぼりましょう。
まず、家族無しのひとり住まいの高齢者でも、炊事、掃除、洗濯、買い物、家の修理、の中で炊事ができれば自助できます。足りない分は、近所に住む高齢の“介護人”が毎日3時間ほど助ければ暮らして行けます。これが老々介護による共助で、昔から有る助け合いと同じです。違うのは、無償では無くて介護人には時給500円が介護予算の公金から出費されることです。
介護福祉を考えるにあたって、亡くなる時を考えておきます。この図は高齢者が最後の時をどこで過ごしたいかの調査結果です。自宅が55%で病院が28%の合計83%で、特養や有料などの施設での最期を希望する人は9%です。従って、共助による介護はこの希望に合わせます。
しかし、実際に亡くなるのは病院が71.3%、自宅が13.6%、老人ホームが8.6%、介護医療院3%です。ここで病院と有るのは自宅で危篤になり、亡くなるのは病院かもしれませんので、病院の71.3%が全て希望に反していたとは言い難いです。
さて、自助、共助で老々介護を行うのは、被介護の高齢者の自宅です。これまで介護給付金での基本は病院で看取りをしてきましたが、共助では自宅で介護人がお世話できるので、要介護2級、出来れば3級までを自宅で介護し、最期の数日を病院で、という自宅での看取りを行えます。
そもそも、老人ホームで介護をするのは、衣食住・医に都合が良いからです。介護される本人にとっては自宅と家族から離れ、生活環境が変わる上に部屋代を払い、見ず知らずのヘルパーの世話を受けます。お医者が近くにいる以外は良い事は何もなく、高齢者の自宅を使えばこれらの問題は無くなります。介護補助金は介護ベッドや酸素や吸引機などのリースに使われますが、もし残額を高齢者に渡すことが出来れば、食事などのQOL改善に使えるでしょう。
この共助を支援するのが地域交通網と訪問医師、看護師、司法書士、および統括役のケアマネージャーによる、数千人の高齢者の住む地域を1単位とする公助の組織です。この地域は都市部で数km四方、農漁村では5km四方程度です。そして、これらの専門的な技能を持つ人々に加えて、介護人の時給管理、出退勤管理、介護費の申請と支払いと報告などの管理は、老人ホームの業者に任せることができます。消滅すると思われた老人ホームは、ヘルパーが若者から高齢者に替わり、業務が建物内から地域に広がる管理業として、生き残ります。
また、高齢者の自宅を使い、歩いて行ける範囲内の元気な介護人が支援するので、これまで地代が高くて老人ホームを建てられなかった都市部でも介護サービスを行えるようになります。ケアマネージャーは共助と公助の連携をとる役割で、より頻繁に出番が生まれて地域密着型の厚みのある介護ができるようになるでしょう。
しかし、80代では2割以上、90代では4割以上が認知症となり、徘徊やボケの症状が出てきてきます。亡くなる時はもっと大変です。こうなった時の介護と医療は素人には無理で、プロの看護人と設備が必要になるので、ケアマネージャーにケースバイケースで対策を考えて頂きましょう。
最後に、この共助制度が現在の介護と違うのはお金の流れです。ここでは介護費費が直接高齢者に渡されます。医師や書士、ケアマネージャー、老人ホーム事業者などは業務報酬として、公務員給与になります。老人ホームへはお金が行かなくなり、代わりに新たな老々介護に使いやすい介護用品事業が活性化し、産業育成効果が見込めるでしょう。