スマートフォンや携帯電話の使う周波数について、 その1
「スマートフォンの使う電磁波の周波数」
スマートフォンや携帯電話(ここではいわゆるガラケーのことです)はどんな時に電磁波を出しているのでしょう。かつて、携帯電話は、電話と名が付く様に通話が目的でした。やがて、デジタル化と共に、メールの機能が加わりました。これが携帯電話(ガラケー)の基本機能ですが、これにインターネットに接続して、自分から音声やメールを送るよりも広く情報を受け取ることが重要になってきました。この様な通信内容の変化で、スマートフォンが生まれました。
スマートフォンは、携帯電話の用途を通話とメールの通信から、情報端末へと大きく変えた物です。これに伴って、ユーザーインターフェース、つまり操作方法、を大きく進化させて指先で画面の情報に直接アクセスすることになりました。これは、昔むかし、スティーブジョブズがアップルやマックで目指したコンピューターを意識させない操作方法、に通じるところです。スマートフォンは、従来のガラケーがインターネットを使うのにPCを操作する知識が必要だったのに対して、コンピュータを意識せずにグーグルの助けを借りて世界中の情報を利用できます。
スマートフォンや携帯電話はこの音声通信用と、インターネット接続などのデジタル通信では、使う周波数帯が異なります。通話の時は、話が途切れないように、電磁波の伝播特性が良い1GHz以下の帯域を主に使います。メールやインターネット接続は、途切れてもデータを再取得すれば済むので、1.5GHz以上の高い周波数帯の広く高速の帯域を使います。会話中に途切れるとすぐにばれますが、メールでは途切れても気付かないからです。これはスマートフォンでも従来の携帯電話でも同じです。
「スマートフォンの電磁波と頭の関係」
通話する時は、普通は電話器を耳に当てて使いますが、この時に電話器の出す電磁波の影響がなが年にわたって、論じられています。携帯電話を使うことが脳腫瘍などの原因となるか否かは、約20年前から、つまり携帯電話が世に出た時から問題とされていました。これは同じUHF周波数帯域の2.45GHzの電磁波を使った電子レンジがすでに実用化されており、一般にもこの周波数帯の電磁波の危険性は認識されていたからです。それにもかかわらず、なぜこの周波数帯を携帯電話は使ったのでしょう。
ひとつは、無線通信の機器は低い周波数の方が作りやすく、かつ遠距離通信が可能なので、低い周波数帯を使うのが利に適います。携帯電話の始まる1980年代では300MHzまでのVHF帯はほ満杯でした。残されていたUHF帯は、たまたま携帯電話の用途に適した周波数でした。7.5cm程度の小型アンテナで済み、かつ都市内のビルかげでも回り込んで不感地帯がすくない、と言う利点を持ちます。限られた周波数帯を使うので、多数のユーザーが使えるように遠くまで電波が飛ばないように、むしろ出力を絞ってあります。800MHzから2.5GHzの周波数帯は携帯電話用として絶好の周波数帯だったのです。
しかし、この周波数帯の電磁波の波長は、たまたま身体の頭や手足等の身体組織のサイズに近いため、身体組織は電磁波に共振して電磁波エネルギーを吸収しやすいのです。スマートフォンや携帯電話の送信電力は最大800mWで、この電力の一部が身体に吸収され、身体内や表面で発熱します。この熱作用が身体に影響を与えないように、現在、これ等の通信機器の出す電磁波は、SARSpecific Absorption Rateと呼ばれる身体組織が吸収する電力当量で規制を受けています。この方法では、電磁波の持つ信号成分は無視して、身体内で起こる電磁波エネルギーの発熱効果だけで評価をしています。次回はSARとは何なのかを説明します。