ローカル5Gラボを関電工が開設してから1年経ったが
ついに業を煮やして、と言うか進みが悪い5Gの開発用に使う試験設備を、国内の携帯電話事業者向けに、関電工が昨年4月に江東区辰巳に開設しましたが未だ成果が見えません。関電工は無線基地局の設計、建設、保守を業務としてきた企業です。この「ローカル5Gラボ」と呼ぶ設備は、5Gサービスを利用したい企業が自社内専用の局所的なローカル5G通信システムを実際に使って、通信能力からアプリケーションまで幅広くテストするものです。こんな仕掛けを作ったのも、一般的な5Gがなかなか広まらないからでしょう。
さて、一般的な無線方式の5Gの使うUHFとEHF帯の電磁波は、信号用の帯域が広いのでいろいろなサービスができます。しかし信号を搬送する基本波は5GHz以上で波長が短かく、移動通信用に使うには伝搬特性が悪く、実用化が困難です。それは、5GHzの電磁波は波長が6cmと短く、電話器と基地局とは常に直接目視関係である直接波が理想です。しかし、人や物にさえぎられると、反射波を受信するか別の基地局から受信することになります。しかし、この反射波は「もしかしたら使えるかもしれない」程度であり、「通信を邪魔をする」かもしれない電磁波です。
それは5Gに使う変調方式が非常に繊細で、乱れの無い電波を使いたいからで、反射波と直接波が重なると、飛んで来る距離の違いで位相がずれた波を重ねた波形となり、直接来る基本波とは異なる波高になります。下の図は直接来る波(赤)に、迂回して位相が45度遅れた波(青)を足した合成波(グレー)を示したものです。
例えば、反射波と直接波と反射波が同じ強さで、迂回による飛距離が3㎝長くなると、反射波は180度遅れて合成波はゼロになります。受信する電話器が動いていると、基本波と反射波の関係は時々刻々替わり、合成波は2倍からゼロまでの間で変化するので、不安定です。
さらに、電磁波強くするとこの様な迂回波の影響が強くなるため、屋外で5Gの電磁波は微弱で到達距離が短くしてあり、電話会社は最大でも100m以内に基地局を設置します。そんなわけで、街中の電信柱の多くに基地局アンテナが設置され、そこから光ファイバーでサーバーと接続します。これは大都市でも過疎の地方都市でも同じで、使用者数の多い少ないに関わらず設備を整えることになり、電話会社には巨額の設備投資が負担となります。
こんな状況で無線方式の一般向け5Gも、どちらかと言えば社内向けのローカル5Gも、ラボが作られてから約1年、いまだに成果が見えません。結局は、5Gサービスの提供のための、電話会社は最後の100mしか使えない5G用の無線網を全国一律に構築するのは無理と諦めることになるでしょう。それまでは、いずれやりますと言いながら、時間繋ぎで4Gの通信システムを使った「なんちゃって5G」でお茶を濁しておくことになるのでしょう。
もし、新しいスマホをお買いになる時は、きっと5Gのオプションを勧められるでしょう。これに対しては、ご自分がご自宅での無線接続、あるいは勤め先でのローカル5Gのいずれかで、5Gサービスを受けられることのご確認をお進めします。