EVは炭酸ガスをたくさん出します
大手のメディアには取り上げられませんが、ネット上ではEV(電気自動車)の衰退がトレンドです。ユーチューバーたちは保守系が多く、EVと電池を造る大手企業は中国と韓国であるため、衰退を大げさに伝える傾向が有りますが、当ブログは科学・工学的に正しい理論と情報でEVの先行きを探ります。
EVは車体よりも電池(今は大半がリチウムイオン電池)が重要です。EVが使う電池は手入れ不要ですが、多くは8年間16万kmで交換し、多額(50万円~200万円)の費用が発生します。このため、中古EVの値段は、車体の残存価値と電池交換費用を相殺して、決まります。もし、メーカーに電池の在庫が有れば、電池を交換してほぼ新車に生き返れます。
これに対して、HV(ハイブリッド車)あるいはPHV(電池を多めに積んで短距離はEV走行、長距離はハイブリッド走行する車)は電池のマネージメントが優れていて、電池寿命は10年と長く、交換費用はプリウスHVで17~18万円とのことです。
一方、CV(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン車)は定期的な調整と整備を行えば、30年、50万㎞以上の寿命が有ります。ちなみに、CVが10万km走行毎に勧められる、エンジンのタイミングベルト交換は軽自動車は3万円以下、普通車が5万円程度です。
さて、CVとHVは車体を造るには鉄を製錬し、加工して車体とエンジンを作る時に大量のCO2が排出されます。一方、EVの車体は重いのでその分CO2を多く出すため、CVのエンジン製造と相殺されます。これに加えて、EVは電池製造で車体製造と同じくらいのCO2を排出します。
ざっくりとまとめれば、EVは、CVやHVと比べて製造時にCO2を2倍出します。ここでCVがEVの寿命の2倍とすると、EVは製造時に出すCO2は4倍になります。EVとしては走行時にCO2を排出しないので、数年間でEVは脱炭素で効果が有るとされますが、走行時にEVはCO2を出さないとする仮定は大きな誤りです。
実際にはEVの電池を充電する電力はCO2を排出する発電所で作られ、EVはCO2を出しながら走っています。従って、もし世界のCVが全てEVになり、これまでCVが出していたCO2が無くなったとしても、代わりにEVがCO2を出します。
この様に、EVの課題の一つは、EVが走るために発電所の電気を使って電池を充電することです。世界は、多くの原発が停止中で、風力と太陽光発電は不安定で安定した電力を作るにはバックアップ用の発電所が必要です。ところが、電力供給の主力の火力発電所は古くて、EV用の発電で出すCO2は先進的なCVの出すCO2よりも多く、製造時も走行時も、EVはCVよりもCO2排出量が多いことになります。(ただし、20年以上前のエンジンの電子制御無しのCVはEVよりもCO2を出します。)
現在、最もCO2削減に効果が有る自動車は、製造時のCO2はCV並みで、燃費はCVの倍近く良く、発電所が不要のHVとPHVです。これが脱炭素の自動車は何か、と言う問いに対する答えです。HVを造れるのは日本で、一歩遅れて韓国が造れます。中国とEUと米国はまだ自力で作れません。
中国と米国は、脱炭素を唱えてEV促進の政策をとりましたが、HVを造れないのであれば、2%ほど節電しながら古い火力発電所を新型に作り直して、不便なEVを使い続けてください。その時は日本の最新鋭の石炭火力発電技術がお助けできます。EUは日本製の便利なHVとPHVをお買いください。
そして最後に、EVは実際にはCO2の削減効果が無く、政治的な駆け引きが作った未完成の工業製品であることを知っておきましょう。