ICタグを使ったユニクロの無人レジ
今回はICタグのお話しをします。ICタグは安価な半導体素子で、物品の管理に使います。今回は、このICタグを使った商品の管理と使用法を説明します。
ユニクロで衣類をご購入された方はご経験がおありでしょうが、無人のレジで代金を支払います。購入した商品全部を、蓋の無い箱(支払い箱)の中に入れると数秒で合計金額を提示してくれます。あとは現金かカードで支払いします。この設備にはICタグが使われているので、タグの現物が観たくて夏用の下着を買ってきました。
右側の写真が商品が入っていたビニール袋で、袋の左下に貼ってある白い製品表示の紙の裏側にICタグが張り付けてあります。裏側から光を当てると、ICタグが透けて見えます。茶色の四角がアンテナ、中央の上側に有るのがICチップで、両方を合わせてICタグです。
ICタグが作られたのは1980年ごろから、日本は1985年ころから応用技術の開発と製品化が行われ、現在は枯れた技術領域です。ICタグは別名無線タグと呼ばれ、電波でタグに書き込まれている情報を読み取ります。現在使われている周波数は125kHz、13.56MHz、2.45GHzの3波で多くは13.56MHzです。
ICタグは電源を持たず、製造時にICチップに書き込まれた184ビットのデータを外部から読む、読み取り専用のROM型が大半で、IC付きのクレジットカードやキャッシュカードなどが身近です。同類のSUICAの様な交通系のICカードでは、外部から一部のデータを書き直すリライト機能付きのものもあり、電池つきも有ります。
ROM型は演算機能無しの184ビットのメモリーで、チップごとに製造時に96ビット(10進24桁)あるいは128ビット(10進32桁)の数値が書き込まれており、チップごとのIDとなります。タグとして使うには、外部からのアクセスに対してタグは自分のID(識別番号)を返答します。ユニクロの場合は、タグのIDが商品名と価格が紐付けされているので、支払い箱に付けられたリーダーで商品のIDを読み取って、サーバーで価格を照会して代金を請求します。購入者は支払いをして品物を持ち帰れます。
ICタグを読み取るリーダーは一括読み取りと呼ぶ、多数のタグのチップのIDを読み取り、確認することができます。2.45GHzタグでは1個当たり10ミリ秒で読み取り、ユニクロはこの周波数のタグを使っています。読み取り速度は周波数に依存していると思います、と、ここまで書いてリーダーの読み取り方法を探しているのですが、見つけられません。技術内容にご興味の方には申し訳ありません。
話しを元に戻して、ここで面白いのは、96ビット、あるいは128ビットのメモリー長で、これは非常に大きな数であることです。どのくらい大きな数かと言えば、地球の表面積は5億1千万平方kmで、これは地球表面を1辺が1kmの正方形で埋めると、約5.1億個になると言うことです。96ビットの24桁の数値は、1辺が10μmの正方形で地球の表面を埋める数です。128ビットの32桁では、1辺が1nm(ナノメートル)の正方形で区切ることですが、原子のサイズは約10nmなので各原子には100個の番号を割り当てることができます。
この様にICタグのIDは膨大な量の数値を使っているので、全世界の品物に管理用の番号付けをしても数に不足は無く、数千年以上も番号が尽きることは無いでしょう。従って、ユニクロの衣類や無印良品の歯ブラシやガラス瓶の全てに個別のID番号を付けても大丈夫です。
この様なICタグを使った商品管理や無人のレジは、省人化に大きな効果が見込めます。ただしこれには、ICタグのIDを読み取るリーダーと支払い箱と言うハードウエアや、商品にタグを取り付ける手間が必要であり、全商品を管理するサーバーも必要です。従ってこのシステムを導入できるのは大企業であり、人件費が大きな業種です。
もう一つ、これほど大掛かりでなくても十分な機能を持つのが、バーコードを使ったレジ方式です。日本では商品に付けられたバーコードは書式が定められており、事業者コードと商品コードの2組で合計12桁の数字を使えます。使える数字が限られているので、個々の商品では無くて同じ商品には同じバーコードを付けています。
現在、コンビニやスーパーでは、光学式の簡単な読み取り機と管理用のPCを使ってレジ作業の簡単化をしています。無人の支払いシステムを造るのも簡単で、バーコードの読み取り器にクレジットカードや現金の入金機能が付け加えられたものも有ります。
これまでは、小売店のレジには店主が座って接客と代金の支払いを受けていました。バーコードやICタグによるレジの無人化は、顧客からの情報が無くなりますが、カスタマーハラスメントを無くすことも大きな利点なのかもしれません。