トランプはどこまで米国を変えるか
米国大統領選挙は、トランプ(以下敬称略)の大勝利で終わりました。私はレーガンの様な地滑り的勝利になるのでは、と期待をしましたがそこまでは行きませんでした。彼の米国優先政策は、これまでのバイデン政権の多国籍企業の利益追求と違って、内政面では国内政治の構造改革で社会と政治が大きく変わるでしょう。対外的には各国への影響は緩やかなものですが、中国を敵国と位置付けた外交と貿易へ大きく変化します。
それと、今回の過激な選挙戦で、米国国民は国を2分する対立心を刷り込まれてしまったことが気がかりです。トランプは、今後はハリスを支持した民衆の心もつかまなければなりませんが、米国人には、日本人の違う思想を持つ者でも存在を許す“八百万の神信仰”が無く、お互いに憎み合っています。トランプにとって、暗殺未遂を2回も受けており大変なことでしょうが、この頑なな米国民をまとめることが、今後の4年間の国家運営の中で大事なことです。
トランプの選挙戦での約束は、まず国内のインフレ抑制です。具体的には生産コストの低減と生産量を増やすことであり、両方に効くのが脱炭素政策によって封じられてきた米国産石油の採掘の再開です。再開は石油価格を引き下げ、科学製品の原料費と電気料金を低下させます。これは付随的に、中国製の太陽電池と風力発電設備の輸入を減らすことになり、中国弱体化の効果も有ります。
ただし、米国内での石油輸送用のパイプラインと精油設備の拡充が必要であり、すぐにインフレは収まらないでしょう。それでもエネルギー源を自国内に保持することは国家戦略として大切であり、石油価格の低下効果が有るので日本も恩恵を受けるでしょう。
石油の次は、対中国の経済的攻撃として、高付加価値半導体の米国独占では、半導体製造装置の輸出禁止と半導体素子の輸入禁止を行います。さらに、中国製EVへの高額な関税は、中国の自動車産業の経営を悪化させ、遅れている米国の自動車産業の回復を助けることで、雇用を増す失業対策をします。
関税収入は、国内企業の減税資金源として使われて国内企業を育て、脱出していた米国企業を呼び戻し、これも雇用を増やします。これらの米国の活性化と需要の増大は、中国の衰退を補って世界経済を安定化させるでしょう。なおここで、市民生活に必要な中国製の低価格の日用品には関税をかけず、市民生活への影響を小さくすることになると思います。
次は戦争の停止で、トランプはウクライナとイスラエルの戦争を経済問題として対処します。米国だけでも総額20兆円を超えた両国への武器援助の停止は、戦争を強制的に終結させます。この武器援助資金の多くは軍需産業に還流しましたが、製品の弾丸には生産性が無く経済効果は小さいです。しかしこの予算が平和産業に使われれば、製品は他の産業で使われて次の利益を生み、国内だけでなく世界経済の活性化に役立つでしょう。
次は選挙公約の2番目の移民問題と社会の変革です。これまでのバイデン政権の政策は、ユダヤ金融資本を中核とした産軍複合体や巨大企業の利益を最大化して、エスタブリッシュメント(富裕な支配層)に富を集中させ、マスコミを支配することで世論を創り上げてきました。さらに、闇の組織、ディープステートDSと呼ばれる民主党政権とエスタブリッシュメントは、低賃金の労働力と投票権を手に入れるために、この4年間で米国の人口の15%に達する大量の移民を不法入国させて、米国国籍を持つ低所得の白人と有色人種労働者を失業させ、治安の悪化を起こしました。
トランプ政権の第1期の時に造った「メキシコ国境の壁」は、過剰な移民の侵入を抑え米国の経済が受け入れ可能な移民を入国させるものでした。しかしバイデン政権は、安い労働力と投票権を輸入するために壁に穴を開けて、トランプ時代の年間80万人程度から1,200万人超を不法入国させて、失業と治安の悪化を起こしました。トランプ政権は不法移民の追い出しに強硬策を採るとしていますが、国中に浸透した国民の20人に1人の不法移民を追い出すのは、無理ではないかと思います。
エスタブリッシュメントが犯してきたこのほかの犯罪も、トランプによって暴かれようとしています。まず最初に、獄中で自殺した大富豪のジェフリー・エプスタインの裁判記録が公開されることになります。この記録には、エプスタインが所有した島で行なってきた少年少女に対する性的な虐待行為と、島を訪れた公職者や多くの有名人とDSの名前が記されています。記録の公開は、これまで口止め料を民主党に献金と協力をしてきた人々の名誉は一時的に落ちますが、縁が切れて民主党は金づるを失います。
次にトランプが暴くのは、DSに利益を与えていた医薬品業界の疑惑と犯罪で、これにはロバー・トケネディ Jrが特別顧問となって、公衆衛生分野を解明すると言われています。最初に、コロナウィルス用のmRNA型ワクチンの安全性が調査対象となります。同時に、1984年以来のアレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長の、中国の武漢ウィルス研究所への資金提供と、ファイザー、モデルナ等の薬品会社のワクチンビジネスでの癒着などが調査され、医薬品産業とWHO(世界保健機関)の癒着がグローバリストと民主党への資金源であることも明らかにするでしょう。
次は、選挙戦で大きな働きをした世界1の富豪のイーロン・マスクが起業家のビベット・ラマスワミと共に、民主党政治で肥大化した政治体制をコンパクトにする「政府功率化委員会」の委員長となって、いわゆる「公金チューチュー」で浪費されていた民主党政権の歳出を減らすことになります。ただし、彼自身も巨大企業の経営者なので、利益誘導の危険が指摘されますが、DSの金融や軍需、医薬、マスコミなどと違って、彼の経営する自動車と通信、宇宙などは、すそ野が広い先端産業であり、この分野に偏っても国益全体では益が多いと考えるべきと思います。
同じくインタビュアーのタッカー・カールソンはその知名度を活かして、トランプ政権の閣僚にへのインタビューを行うなどで、トランプの政策を間接的に支援する広報活動に関わるかもしれません。彼が最初に行うのは、J・エプスタインの裁判記録の開示でしょう。
CIAとFBI、およびこの2つを統括する司法省DOJは、DSに支配されており、警察や検察を使ってトランプ大統領の職務の遂行と選挙戦を妨害してきました。トランプへのロシア疑惑、ハンター・バイデンの麻薬や中国との贈賄は無視、などで極めて親民主党よりでした。しかし、今のところこれらは数が多くて、トランプ側に十分な人的資産が用意できるかは分からず、4年間で決着をつけられるかは悲観的です。
政策の実行のかなめとなる首席補佐官にスーザン・ワイルズ氏が選ばれました。8年前からトランプを助けており、日本で言えば官房長官で、大統領の実務全般に協力する強い権限を持ち、副大統領を超えた実質のナンバー2です。トランプを制御することが出来る芯の強い人物とのことです。
最後に今後の予測を。今回の選挙ではラティーノ、つまりスペイン語を話す中南米からの移民の内で、既に米国で職を得ている全人口の約4%にあたる1,000万人の移民たちが、黒人男性と共にトランプ優位の投票をしたことが大きいと言われます。それでも今回の選挙では、2020年からの4年間でバイデンが不法入国させた2,000~3,000万人はハリス優位の投票だったでしょう。しかし4年後の次の大統領選挙では、これ等のラティーノは支持を替えて、前回分の約5%に加えて今回分の約15%の移民が共和党優位に変るかもしれません。今は勝てても将来は敵になる移民を大量に入国させてしまい、民主党は石破総理並みの愚かさです。