iPhone7のワイヤレスイヤホンマイクAirPodsの電磁波
<AirPodsとは>
iPhone7はワイヤレスイヤホンマイクのAirPodsを定価16,800円(税別)で後付けできます。AirPodsの左右別々の2つのイヤホンマイクは、ブルーツース通信による多機能イヤホンマイクです。機能的には有線のイヤホンマイクと同等で、音楽を聴くだけでなく、Siriと呼ばれる音声入力アプリケーションを起動して電話をかけることもできます。アプリケーションを音声で使えるように、AirPodsは赤外線センサーで装着を確認し、Gセンサーがクリック(タップ)を認識します。http://www.apple.com/jp/airpods/
構造的には、イヤホンの下にマイクロフォンがぶら下がっており、これで口元の声を拾うので2cmの長さの棒状のものです。イヤホン本体には通信とスピーカーのICチップが入っていて、使用する周波数は2.5GHz帯で、出力は特定小電力なので10mW以下でしょう。
<血液脳関門の開大について>
iPhone7のAirPodsが発売されてすぐに、米国で耳の所で電磁波を出すのは危険とする説が出ました。
(危険説)
発表したのは、米カリフォルニア大学バークリー校公共健康医学キャンパスのJoel M. Moskowitz教授で、携帯電話やAirPodsを大脳に接近させて動作させるのは、非常に危険な行為だ。大脳の傍にマイクロ波送信装置を設置するのと変わりない。
http://www.saferemr.com/2016/09/airpods-are-apples-new-wireless-earbuds.html
どの様に危険かと言えば、
・長時間耳の中に電波を送り続けると、血液脳関門を開大する。
・血液脳関門は化学的な毒素が人体に侵入するのを阻止する重要な組織だ。
(アップル側の説明)
これに対するアップルの技術者兼市場総監によれば、
・アップルが採用したのはブルートゥース技術で、電波の伝送においては米連邦通信委員会(FCC)の指導準則に厳格に従っている。
・ブルートゥースが伝送する電波は電子レンジの電磁波よりもかなり弱い。
(解説)
双方が自分の側からの意見を出していますが、全くかみ合っていません。このAirPods危険説は、同じ周波数帯を使うスマートメーターを危険とする説が、日常生活に刺激が欲しい方々のお好きな、茶飲み話程度であったのに対して、耳の孔といういわば頭の中で2.5GHz帯の電磁波を出すので、影響を調べなければなりません。
携帯電話による障害は、これまでは脳腫瘍や小児の発達障害でしたが、Moskowitz教授は血液脳関門の開大による障害に、電磁波の研究者を気づかせました。そこで、血液脳関門とは何か、2.54GHzの10mWが影響するのかを説明します。
一方、アップルがFCCの指導基準に従っていると言うのは、身体内に誘起される電流が規制値以下と言う事です。規制値以下であれば、血液脳関門が開かない、と言うことではありません。次に、アップルはAirPodsを電子レンジと出力を比べています。電子レンジのkW出力と比べれば小さいのは当たり前ですし、電子レンジは厳重にシールドがしてありますが、少しは漏れます。漏れても頭の傍ではないので無視できますし、電子レンジが危険なのは、極超低周波磁界の漏洩です。
<血液脳関門とは何か、それが開いてしまうと何が起こるか、「生体と電磁波」から抜き出します>
「生体と電磁波」の参考文献の25~34に血液脳関門への電磁波の影響の医学的な実験結果が有ります。これによれば、脳は血液の成分が脳に勝手に入ってきては、脳が安定に働かなくなるため、外部から保護される必要があります。そのために、脳の血管は、重金属のような有害物質や、血液の多くの成分などを通さない機能を持ち、この機構を血液脳関門と呼びます。正常な関門は栄養となるグルコースを取り込み、異物を排出し、他の不純物を脳に入れません。
20年以上前から、電磁波の曝露により脳血液関門が開く、という動物実験が有ります。これに対する反論の論文も散見されますが、電磁波の強度、曝露時間により状態が変わり、強弱の中間の強さでは反応しない領域、すなわちウィンドウ領域も存在するため、効果が認められないという報告も有ります。この様な、実験条件によって影響が有ったり無かったりするのは、研究にはよくある常識です。あるいは、電磁波の専門知識が有れば、同じ実験装置を使って作為的に影響を出したり出さなかったりもできます。
それでも、“出た”とする実験結果が有るなら、頭の中が“出る”状態になることが有るので、気を付けることにしましょう。
血液脳関門の電磁波曝露による脳への不純物流入が増えることについて、Salfordはすでに1992年に、ラットのMRI電磁波被曝による血液脳関門の破たんによるアルブミンの脳内への流入を認めています。1994年には携帯電話の使う周波数の915MHzの無変調電磁波、これをパルス変調、あるいは実際のGSM通信方式で変調した電磁波を使い、0.016~5W/kg(SAR)の強度でラットを被曝させたところ、パルスと変調波条件でアルブミンの脳への流入を認めています25)。
アルブミンの流入とは、多くの血中化学物質がアルブミンに付いて動くため、アルブミンと共にこれらの化学物質が脳に侵入します。さらに、浸透圧の関係で水も一緒に動き、脳はむくみます。アルブミンとは肝臓で作られるたんぱく質で、血中タンパクの67%を占め、血液中の色々な物質を運んだり、体液の濃度を調節します。分子量は66,000と大きく、血液脳関門が開くときに他の物質も自由に脳内に流入します。
2003年にはラットにGSM電話器の通話モードの電磁波を2時間曝露したことで、大脳皮質、海馬、および基底核の神経細胞が委縮することと血液脳関門障害とのかかわりを論じています26)。その他にも、1.5GHzでグルコースの2倍の分子量を持つシュークロースの透過性が増える、と言う研究もあります27)。さらに大きな分子量ですから、入れなかった分子も入れることになります。
28~34の文献は、主に血液脳関門の開大を利用して、携帯電話帯の電磁波を使って脳に薬物を注入する文献です。人体に電磁波を当てて治療を行うもので、開大の証拠です。これらの実験は携帯電話帯の1GHz近辺を使いましたが、ブルーツースは2.5GHzなので、血液脳関門に対する影響の実験例は有りません。波長が短いので、効果としては同じか、頭皮での誘電体損失が増えて、脳に対する影響力は若干弱いでしょう。
<評価>
まず、AirPodsを使っても、Moskowitz教授の警告の様に血液脳関門は開き、Salfordの言う開大による各種の“好ましからざる”分子(たんぱく質)に脳が暴露されます。長時間の使用が広範囲の脳の組織を委縮させる危険、に注意すべきでしょう。
iPhone7のSARは1.46W/kgで、1.6W/kg(SAR)のFCC基準をクリアしていますが、ガラケーとスマホを含む国産の携帯電話の多くが0.5W/kgなので、約3倍の大きさです。http://www.saferemr.com/2016/09/iphone-7-models-specific-absorption.html
問題の、AirPodsのSAR値は0.466W/kgの基準値以下で、国産の大半の携帯電話程度です。http://www.saferemr.com/2016/09/airpods-are-apples-new-wireless-earbuds.html。
AirPodsはiPhone7と比べれば頭部の被曝量は3分の1ですから、AirPodsがお進めになります。では、ウェーブセーフを使うとどうなるでしょう。
<ウェーブセーフとAirPodsと、どっちでしょう>
ウェーブセーフは、スマートフォンの通話時に本体を頭に接している時に、頭部が被曝する電磁波を1/10~/100にします。iPhone7に使えばSAR値換算で0.146~0.0146W/kgで被曝量は大幅に少なくなります。ウェーブセーフは、音声通信に良く使われる1GHz以下のプラチナバンド(SBの用語ですが)での被曝量減衰効果は1/100で、Salfordのマウス実験のミニマム値0.016W/kgをクリアして、血液脳関門が開く影響を避けられることになります。ただし、ウェーブセーフは頭と電話機の間に貼るシールですから、AirPodsには使えません。AirPodsのSARは0.466W/kgですから血液脳関門は開きますので、お気を付けください。
iPhone7本体にはウェーブセーフを使い、音楽を楽しむ時は普通のイヤホンで、と言う方法が電磁波的には一番無難ですが、いかがでしょう。
最後に、国産のスマートフォンのSARは大半が0.5W/kgです。ウェーブセーフを使えば0.005W/kg(SAR)になります。Salfordの実験条件0.016W/kgの下限のさらに3分の1です。Salfordは影響する範囲を予備実験で探してから、この範囲に定めたと思います。ウェーブセーフで値段の高いイヤホンマイクを使わずに済むかもしれません。
注1:「生体と電磁波」丸善出版、 坂部貢、羽根邦夫、宮田幹夫 著
極低周波磁場から極超高周波電磁波帯までの電磁波と、生体との関係および影響と障害について記した、医学関係者向けの解説書。