アルファ碁と人間
5月27日に、世界最強とされる中国人棋士の柯潔(かけつ)九段が米国グーグル参加のベンチャー企業「ディープマインド」社の囲碁ソフトの「アルファ碁」に3戦して全敗しました。
アルファ碁は、ディープラーニングアルゴリズムによる自己進化型のソフトで、1戦した段階でアルファ碁柯潔九段の手口を覚え込み、これに勝つ方法を作り出しました。2戦目以降は1戦目よりも楽勝をしていたのではないか、と思います。AIの特長を理解していれば、プロたるものは、1度負けたら打ち筋を代えて挑むことが必要なのですが、それに気づけなかったのでしょうか。得意な手筋を自己ベストと思い込んで、勝負を重ねても勝つことはできません。
もう一つ大事なことは、「負け方の美」です。プロには、勝つにも負けるにも「美」が必要です。新聞に出た敗戦を語る柯潔九段の顔はこの美からは程遠い渋い顔でした。若いとはいいながら、人格的にも機械に負けていたようです。
AIは思考の道案内
日本でもプロの将棋士が試合中にAIの打ち方をカンニングしたとかしなかった、とかでもめました。ディープラーニング方式のAIはメモリーに蓄えた前例の量と、それを検索して現在の事例と似ている点を探し出して、勝ちに結び付ける候補をいくつか作り出し、最善の候補を選ぶプログラムです。この前例の蓄積と検索技術の進歩がAIを強くしました。いくら人間が焦っても、量と速さはムーアの法則でコンピュータは進歩します。現在良い勝負ができても、半年後には確実に負けます。将棋も碁も今後はAIに勝つことは出来ないでしょう。
棋士とAIとの関係は、この様なものです。では、どうするか。
勝負は、「美意識」です
AIと勝負する時は、棋士も自分がAIを補助として使い、AIの計算で答えの候補をいくつか出してもらい、この手で相手のAIと勝負する。AIは、常に最善の答えを出すのではなく、悪手を打つ場合も有ります。幾つかの候補の中からプロらしい手筋を組み立てAIと勝負する。負ける時は負け方が大切で、プロ将棋の世界ではすでに行われています。
人間に対してAIは、道案内人です。しかし、決して任せてはいけません。
巷にあふれるAI
ニュースには「AI」と言う文字が溢れています。Artificial Intelligenceとは、自ら進化する機能を持つソフトウエアです。プログラム全体を自分で書き換えなくても、判断の基準を替えることが出来れば、自分で新しい思考の道筋を作れます。これは、プログラム中にフィードバックの機能を加えておくことです。
マイコンソフトでも、計算機の推薦に対して逆らう行為を人間が繰り返したら、プログラムは自ら推薦の内容を替える。これがAIの入り口です。
アルファ碁に勝ち逃げされた
ここまで書いたところで、ディープマインド社が人間との対決は行わない、と宣言をしました。勝ち逃げです。今後はいくら人間が努力をしても素でアルファ碁に勝つことはできません。ディープマインド社にとってのアルファ碁の勝利は、AIの開発過程の一つに過ぎなかったのですから、引退は当然でしょう。アルファ碁は佐為(SuperAI)になったのですね。
今後は、人間の間で勝負を続け、「美」を追求することになるのでしょう。