光の話その2(色と電磁波)
人間はどうやって色を感じるのでしょう。本当は、エネルギーの違う電磁波を頭の中で個人ごとに作った色感を感じているのです。下の図はスガツネ工業のサイトにあった画像のコピーですが、緑と思っている光は電磁波の波長では540nmです。このように、人間が感じている光、つまり可視光は、電磁波の中で、ごく狭い周波数の範囲なのです。
しかし、この周波数の電磁波が持つエネルギーがちょうど、人間の眼にある視物質と言うたんぱく質を変性するエネルギーであり、これが太陽光で最も放出量が多い電磁波帯だったのです。これは、動物にとって物を見る、という外部情報を得るのに適した環境を手に入れる事ができた、という幸運でしょう。
この540nmの光を、人間はどの様に感じ取っているのでしょう。人間の網膜には、色を感じる錐体細胞と、暗い所でもわずかな光を感じる杆体細胞が有ります。色を感じる錐体細胞には、赤、緑、青の3つの色を感じる3種類の視物質が細胞ごとに有ります。人間が色を識別するには、視細胞ごとの視物質が光の波長、つまりエネルギーで電子を放出し、その電子信号を増幅しながら脳へと伝え、脳はどの視細胞から信号が来たかで、色を判別します。下の図は視物質の波長(色)に対する反応の強さです。
図でお分かりの様に3つの視物質は、それぞれ感度がオーバーラップしています。緑色の540nmの光が来た時は、2つの視物質が感じます。一つは530nm付近にピークを持つG視物質で、これは緑色光を感じる、とされ最も強く反応します。もう一つ、564nm付近にピークを持つ赤色光用のR視物質も反応します。3つ目の420nm付近がピークの青用のB視物質は殆ど反応しません。つまり緑色の光が来れば赤も感じており、信号を受けた脳が緑色を感じている訳です。
この3つの視物質は錐体細胞という視細胞に分布していますが、もう一つBとGの間に498nmにピークを持つ視物質が桿体細胞という視細胞にあります。人間はこの視細胞からの信号を色とは感じないで、明るさを感じるだけです。この桿体細胞は暗い所での視力を得るものです。東南アジアから日本にかけての、瞳孔が黒い人種は青い目の北欧人に比べて桿体細胞が少なく、暗い所での視力が落ちます。
話を元に戻して、自然界の色は同じ緑と言っても、それに近い色の光を出しているので、波長の分布は複雑です。これに比べて道路照明の黄色いナトリウムランプ、LEDなど、特にレーザー光は一つの波長の単色光なので、違和感が有ると思います。自然界では、光を出す方も色の分布を持ており、受ける視細胞も複数の視物質が反応して、両方が分布を持ちます。この様な曖昧な光源と反応に慣れているので人工的な単色光を看ると、かえって違和感を受けるのでしょう。