羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

福島原発の処理“済み”水の安全性を評価

 8月24日から福島第1原発からALPS処理済み水が放出されました。ようやく、政治活動に科学が勝ったことになります。福島原発は、2011年3月11日の地震と津波による電力喪失で、炉心に冷却水が送れずオーバーヒートして冷却水が干上がり、露出したジルコニウム合金製被覆の燃料棒が水蒸気と化学反応して水素が発生し、水素が建屋内に貯まって爆発しました。さらに、水を失って露出した核燃料は、中性子が吸収されずに核反応を続けて自らの発熱で溶融し、圧力容器底を溶解し、さらに高温で格納容器も溶けた可能性が高い、と言われています。
 この過程で核燃料がさらに核反応が激化して高熱化するのを防ぐのは、水しか有りません。冷却をしないと格納容器の底を突き抜けて、地中深くまで核燃料が達するチャイナシンドロームを起こします。福島原発は格納容器までは溶けたが、間一髪で海水注入で建屋の基礎部分で止まったようです。
そもそも原子炉は、不安定なウラニウム235の原子核に中性子を打ち込んで核を分裂させ、この際に生じる中性子で次のウラン235を分裂させて、分裂を持続させます。冷却水は、ウラン235の核分裂で放出されるエネルギーを吸収し、中性子を減速すると共にトリチウムに変換して吸収することで、原子炉の暴走を防ぎます。冷却水は、この熱エネルギーを外部に取り出して発電を行う役目も有ります。
 正常な原子炉であれば、核燃料のウラニウム235と核分裂物質は燃料棒のジルコニウム合金の鞘の中に有り、中性子だけが鞘を通り抜けて出て来ます。この中性子は、1次冷却水中の重水素に吸収されてトリチウム(3重水素)となり、蒸気となって発電機を動かした後で熱交換器で復水して閉鎖空間中で循環します。このため、原子炉外に出て来るのは、漏水中のわずかなトリチウムしか有りません。しかし、復水器で配管越しに冷却海水が中性子を浴びて作られたトリチウム水は大量です。

 一方、事故を起こした福島原発の場合は、溶けた燃料棒からはウラニウム235やストロンチウム核分裂生成物が冷却水に溶け込んでいます。さらに、これらの核分裂物質が崩壊する際に放出した中性子により、冷却水中の重水素がトリチウムに変わります。従ってこれは正に汚染水です。
 日本の多核種除去設備Advanced Liquid Processing System ALPSは、トリチウム以外の核分裂生成物を汚染水から除去します。従ってALPSからの排水は正確には処理済み水です。しかし、自然界に流してはいけないと、現在原発敷地内のタンクには総量で137万トンが、1基当り1千~1.3千トンの汚染水と処理済み水が、約1千基のタンクに貯留されています。

 正常な原発にはこの様なタンクは不要で、運転中の原子炉の排水はそのまま海・川および空気中に蒸気で放出されます。そこで、原発が出すトリチウムが地球に及ぼす影響を、数字で確認しましょう。
【太陽光が作るトリチウムと原子炉が作るトリチウムは同じ】
 自然界では成層圏の上層で太陽からのガンマ線などの宇宙線によって、年間7京(7E16、E16とは10の16乗のこと)ベクレルBqのトリチウムが生成されます。このトリチウムは、地表に降り注ぎ、全地球では、空気中と海水中合せて約120京(1.2E18)Bqが存在しています。
 問題の福島原発の処理済み水は年間22兆(2.2E13)Bqです。事故前は全原子力発電所から日本は380兆(3.8E14)Bqを出していました。世界中の原発の合計は、精確では有りませんが、9000兆(9E15)Bq程度でしょう。これは、全地球の宇宙線による生成量の13%程度で、120京Bqへの増分は0.8%です。IAEAはこの程度の量なら自然界に影響しない、として各国の原発が自然界にトリチウムを放出することを認めています。福島原発の処理済み水22兆Bqは、全地球の120京Bqの20万分の1です。
 お分かりになりましたでしょうか、福島原発の処理済み水は、太陽の創り出したトリチウムに比べて微々たるものです。世界中の海や大気には、地球ができた時から大量のトリチウムが存在し、1リットルの飲み水には0.5Bqが含まれています。これは地球上の水全てで同じです。私たちの体の中にも体重50kgであれば18Bqが有り、これも人類と動物すべて同じです。ゼロBqを求めるのは非科学的です。
 福島原発の処理済みの水は放流されても直ぐに海水で希釈されます。福島の漁民の方々はなぜ騒ぐのでしょう。いたずらに心配することは、自ら風評被害を広めるだけです。科学を信じ、魚をとって、安心を広めましょう。
 風評被害と言えば、お隣の国々は「汚染水が!」と、自国の非科学性を世界に広めていますが、これは敵失であり、民度の低さを世界に広めるだけです。
 両国は生態環境を破壊しており日本にとっては両国から、残留農薬と化学物質、重金属や残留プラスチックで汚染された、農作物や魚介類などの食品が入ってこないか心配です。輸入食品は全量(これが大事)の残留毒物を検査して、規制を守らせましょう。
 日本が食品の規制を厳しくすることが、両国政府に代わって民衆の健康を守ることにもなります。

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