羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

EVが世界中で売れなくなった。消費者はなぜEVシフトを拒むのか

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出した脱炭素のシナリオは、産業が発達していない国にはCO2の排出を許し、先進国にはCO2排出量を自粛させる圧力をかけることです。このグローバリスト達が創った脱炭素の胎動は、中国、EU、米国などの技術後進の自動車産業に利用されて、トヨタ攻撃に使われています。
中国、EU、米国が創った脱炭素ムーブメントを利用するシナリオは、自国のCV(エンジン車)とHV(ハイブリッド車)の開発努力を放棄してEV(電気自動車)だけを推進する、という安易な道を選ぶことでした。何をするにも方法を一つしか選ばないのは大きな博打です。これらの国の政治家と自動車企業の経営者が、自分達が決めれば世の中はその通りに動くという思いこみは過信であり、消費者によって見事に覆されて消費者は敵側のトヨタのHVに走っています。
 すなわち、中国はEVが売れず、1年分の在庫を作ってしまいました。EUでは下の図の様にエンジン車が減った分をHVとEVが埋めましたが、EVは4分の1しか取れません。米国はEV製造技術を持たず、スタートに立ってもいません。

 EVが売れない理由は値段に見合う価値が無いからで、日本において最も大きく現れ、中国にさえも現れています。すなわち、EVは①値段が高くて維持費がかかる、②使い難い、③危険な未完成の商品、であることに消費者が気付き、使いやすいHVを選んだことです。
   ①EVは値段が高くて維持費がかかる
 CVの動力源はエンジンとガソリン、EVの動力源はモーターと大量の電池、HVはモーターと電池とエンジンとガソリンです。137年の歴史を持つガソリンエンジンは、60年前に始めた電子制御技術が完成段階です。この結果、特殊な例外を除いてエンジンの開発費の必要は無く、生産方法はこなれています。
 これに対してEVの動力源のリチウムイオン電池は未だ未完成で開発費がかかり、製造には自動車産業とは無縁の化学工場を新たに作るので、製造費はエンジンよりも大幅に高く車体と同額で、EVの製造費はCVの倍になります。
その上に電池には寿命が有り、8年間、16万kmで交換が必要で、交換の費用は50万円~200万円です。
 次は走行用電気の代金で、消費者はタダだと思い込んでいましたが嘘でした。最近は発電所の燃料代が高騰しています。英国では1kWhあたり100円前後で、満充電で5千円~1万円かかります。この電気で400km走れるとすると、1kmあたり12円~25円です。一方、英国でのガソリン代は1リットルで250円程度で、実用燃費が15km/リットルのCVは1kmあたり16.7円、実用燃費20km/リットルのHVは12.5円となります。つまり、初期費用はCVが安く、走行費用は変わらず、EUの消費者はHVを買っています。
   ②EVの使い難さ
 EVのカタログには、必ず満充電した時の航続距離が書いてあります。米国では消費者から、テスラ社のテスラ3が表示の半分しか走らなかった、と訴えられています。この訴訟、EVの電池が周囲温度の影響を強く受けるためで、テスラが悪いのではなく電池が使い難いからです。
 リチウムイオン電池は温度の影響を強く受け、20℃以上で劣化し、45℃以上は電池の電解液が化学分解して生成物が副反応を起こす危険範囲となります。逆に20℃以下では電荷が動き難くなります。0℃以下では充電時にリチウム原子を貯め込む負極の働きが悪くなり、わずかな電気を貯めただけで満充電が表示され、走行距離が大幅に減ります。さらにEV用の急速充電器の数が少なくて1回の充電量が限られ、長距離ドライブでの100km~150kmごとに充電するのは、使い難いです。
   ③リチウムイオン電池の発火
 リチウムイオン電池は、CVの数10リットルのガソリンに相当するエネルギーを貯め込んでおり、もし電池の正負の電極がショートすると大電流で電解液が沸騰し、圧力上昇で爆発して引火性の有機溶媒が飛散して燃え上がります。電極がショートするのは、衝突や熱ひずみで電池が変形した場合と、電解液中の不純物や電解質の化学生成物が析出して電極間をショートする場合とが有ります。後者は停止中でも起こるので、EVを地下駐車場や屋内駐車するのは危険とされています。
 ①②③の事実から世界中でEVが売れなくなり、ここ数か月で在庫が急増して小さくなるパイの奪い合いが起きています。脱炭素で一番熱心だったドイツでは、全生産をEV製造に切り替えたフォルクスワーゲン社が、10月にはEVの生産を2週間停止しています。米国は大手3社ともに需要が見込めないと、電池工場の建設を停止または中止し、国外企業とのEVの共同生産計画を止めています。テスラは、中国の悪意さえ感じる上海工場建設の不許可が、EUへの進出の阻害となっており、米国では自動運転の事故と電池の炎上などで信用を失墜して、値下げをしても販売台数は世界各地で減り続けています。
 日産リーフは、2010年に初代を発売し2019年に2代目を発表して2019年に40万台が売られて、この間一度も電池関連の事故を起こしていません。次いで発売された三菱iMIEV、日産サクラなども無事故です。この様に諸外国のEVに比べて優れた実績を残している日本製EVですが、補助金が出されていてもやはり売れません。
 現在、EUで販売台数が増えているのはHVです。消費者は、無意味な脱炭素には協力せず実利でHVを選んでいます。

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