羽根邦夫Blog

”工学博士、電磁波対策製品WAVESAFE発明者のブログ”

上手に老いる方法(物忘れの脳科学)

 高齢になると、誰でも物忘れが激しくなります。そこで、ここでは記憶という行為を脳を生理学的に解析して物忘れを説明します。ただし、物理的に脳細胞が死んでしまうアルツハイマー病は除きます。この物忘れについて、脳の記憶の生成と不要な記憶の消去と、読み出し(想い出し)という機構を知ることで、物忘れを少しでも減らす方法を考えてみましょう。
 まず、脳細胞は目鼻耳などからの刺激を受けてその信号(情報)を脳で理解し、その結果を記憶します。まず記憶の方法です。脳細胞は下の図の様に脳細胞からの出力を担う1本の軸索と、多数の樹状突起と呼ばれる他の細胞からの情報を受ける働きをする部品を周辺に備えています。それぞれには多数のシナプスと呼ぶ他の細胞との情報を送受する電気的な結合用の組織が有ります。シナプス結合は、記憶を書き込む前は導通していませんが、導通することが記憶を創ることになります。この脳細胞とシナプスの結合は計算機で言えば、メモリーとハード的な信号処理回路を構成して記憶と判断を行い、多数の脳細胞とシナプス結合を合わせることでその人の知識や思考方法を形成します。

 記憶や知識を得ることとは、外部からの刺激や学びを導通するシナプス結合を増やすことです。しかしながら、私たちの脳は母胎内で成長する時に、過剰の脳細胞と非導通のシナプスの予備を作っており、ほんのわずかしか使っていないことはご存知の通りです。そこで、脳にはせっかく作った記憶と判断と言う脳細胞とシナプス結合の関係を自動的に消去する、シナプス刈込と称する機能を備えています。
 これは、覚えるには努力を要するが、忘れるのは脳が勝手にしてしまう、という事です。ある用件(ことがら)を記憶して知識とする時に、多くのシナプス結合が生成されます。すなわち例えば、授業中に先生が話す用件については耳で聞いたことや、黒板に書かれた文字や図を、大事な用件として複数のシナプス結合群(セット)を創り出して記憶します。しかし、隣の席のおしゃべりなどの不要な事は思い出さなくても良いので、刈込がおこなわれて消去されて大事な用件だけを残します。それに加えて、本人が用件を理解して、論理的に正しい構成のシナプス結合関係を創らないと、残された記憶セットは読みだした時に理解されず結局は捨て去られます。
 刈込は活動の少ないシナプス結合にも行われるので、加齢と共に脳は少しずつ記憶を減らします。それに対して、私たちはもし物忘れをしたら、別の場所に書かれていた同じ内容の記憶のセットを呼び出して記憶を再現します。若い時は沢山の記憶した脳細胞とシナプス結合のセットを持っているので、この再現を無意識に行えます。しかし歳をとるとこの記憶セットの数が減っているうえに、記憶をどこにしまっておいたか分からなくなるので、物忘れが顕著になってきます。
 さらに新しい情報を得た時に、歳をとるほど記憶セットの生成方法が劣化して理解と記憶が下手になります。つまり物覚えが悪くなり、今聞いたことをすぐに忘れることにもなります。これに対応するには、メモを取る、と言う外部記憶を用いて対処するのが一つの方法です。録音する、という方法も有りますが、労せずして記憶を創るのでは跡に残すセットも薄弱です。聞きながら「これが大事だ」、と判断しながらメモを作れば手も動かすので、判断力を鍛えて手という補助の記憶のシナプス生成システムを動かすという利点も有ります。また、別の事柄と結び付けて記憶セットを複数作ることも、優れた方法です。
 要するに、脳の生理学から刈込は生来備わった機能であり、これに逆らわずに、脳を使う方法を創りながら、シナプス結合を増やしてゆく方法を作ることが大事です。歳をとって物忘れが激しくなったことを嘆かずに、これに対処する方法を考え出しながら生きてゆきましょう。

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